「国際緊急援助隊救助チームの看護師の備え」

愛知医科大学病院 救命救急センター 川谷陽子

 

国際緊急援助隊における救助チームの活動は、被災地における被災者の捜索・救助、応急措置及び安全な場所への移送などの活動を行ないます。救助チームに帯同する医療班(医師・看護師)の意義は、①チームに対する医療支援として、救助隊員が安心して活動に専念できる支援体制の提供、②要救助者に対する医療処置として、救助隊員と連携して、医療処置を含む質の高い救助活動の実現を行います。救助チーム医療班の役目を「被災者救護のため」と思われがちですが、救助チーム医療班の第一の目的は、救助隊員の健康と安全を守り、もし救助隊員が傷ついたり病気になったりした場合に、適切に対応し治療することです。また、派遣される海外の被災地では、高温・多湿(あるいは低温・乾燥)、そして激しく舞う粉塵や恐ろしい感染症と言うような非常に劣悪な環境が待っています。さらには現地の医療体制そのものが崩壊している可能性も高く、救助活動には国内の場合と比較して想像以上の危険がつきまといます。そんな状況の下で救助活動を遂行するため、医療班は、縁の下の力持ちとして救助隊員の活動を全力で支援してゆくことが活動となります。 救助チームの看護師は、様々な役割があることを中国の地震派遣を通して痛感しました。例えば国際緊急援助隊医療チームで派遣される場合、看護の対象は主に被災者となります。しかし、救助チームの看護の対象は、救助隊員や救助犬・チームに帯同する人々・救助される被災者など様々です。その役割も保健衛生管理・ストレスマネジメント等多岐にわたります。時には救助隊員全員の食事の準備や、トイレの設置などをしながらコミュニケーションをとり、体調不良の隊員を見つけ出すことも必要になります。派遣時から、隊員が無事帰国し、職場へ復帰するまでサポートし続けることを常に考えていくことが必要だと思います。救助チーム看護師の活動は、派遣前から始まり、派遣中は昼夜を問わず続き、派遣終了の帰国後も続きます。

救助チームの看護師は日常からコミュニケーション能力を磨き、救助に関する様々な知識を得、なにより救助隊員を支え、活動に耐えうる体力をつけておくことも一つの「備え」と言えます。

 




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