理事長の挨拶


 日本災害看護学会は、「災害看護学の知識や実践の体系化をはかり、災害看護学の発展を通して、人々の生活と健康に寄与すること」を目的として1998年12月13日に神戸の地で発会致しました。その当時、21世紀の日本の災害看護に関連して、これから検討すべき課題として、以下ものを挙げています。
 @ 災害看護に関する知識体系を確立する。
 A 災害看護に関する活動体制及び方法を開発する。
 B 災害看護学としての教育プログラム体系を確立する。
 C 災害看護に関する国際的研究ネットワークを開発する。
 D その他災害看護に関わる諸処の課題に取り組む。
 発会以来10年が経過し、これまで10回の年次大会を開催しています。第10回年次大会では、10周年記念事業を挙行し、この10年間の学会活動をレビュー致しました。この間会員は、今年6月現在で個人会員808名、組織会員62組織、賛助会員4団体となり、毎年確実にその数を増やしています。
 初期の年次大会では、災害看護学の黎明や萌芽というキーワードの下、災害現場の活動で得た実践知を理論値へと体系化するなどの報告が多く見られました。次にネットワークや備え、そして如何に看護の力を発揮するかという役割分析から教育、地域づくりとそのテーマも展開されて来ました。この間、国内では新潟県中越地震をはじめとして、大小多くの災害が発生しています。また、海外ではスマトラ島沖地震の津波災害がまだまだ記憶に新しいところですが、今年は5月にミャンマーのサイクロン、および中国で四川大地震が発生しています。
 本学会の特徴は、災害看護に関する研究・実践活動のネットワークづくりに力を入れていることです。ネットワーク活動委員会は、当初は一定規模以上の災害に対して電話での初期調査により情報収集を行い、その上で実際に現地へ行く必要があるものについては初動調査を実施し、多くの経験知を蓄積して来ました。その活動をベースに、現在は一定規模以上の災害に対して先遣隊を組織し、災害直後の看護ニーズの把握や、支援体制を現場で整える役割の一部を担い、被災者などの健康問題、看護ニーズ等の情報収集と査定を行い、必要な支援を明確にすることを目的として活動しています。
 また、個人会員だけでなく、組織会員も擁しているという特徴もあります。組織会員は、病院や専門職能団体、大学などの教育機関等が組織として参加し、災害時の国内外ネットワークの開発および拠点として活動することが期待されています。更に本学会は、学術集会のみならず組織会員と連携した研修会を開催しています。
 本学会のもう一つの特徴は、教育者や研究者ばかりでなく、災害支援に関連する様々な活動経験のある方が会員となっている点です。これは、災害看護学の発展は実践と深く繋がることによってなしえるという考えを基盤としているからです。更に、災害看護に焦点を当てていますが、それを学際的に探究するために看護を専門とする人以外の方々にも会員として、また役員としてお入りいただいています。
 今年の1月には、世界災害看護学会が発足しました。現在、世界災害看護学会は、組織を会員として構成されておりますが、もちん日本災害看護学会も会員として発会式の準備・運営に関わりました。また、第1回の学術総会を日本災害看護学会が引き受け、学術総会長として本学会前理事長の南裕子氏を選出しています。世界災害看護学会の第1回学術総会は、平成22年に日本で開催することを決めておりますが、詳細については、本学会ホームページで順次ご案内しますので、宜しくお願い致します。
 今後は、世界における多くの関連組織や関係諸氏と力を合わせ、国際的なネットワークを構築すること、また、看護の立場から、防災教育・訓練や体制づくりに始まり、災害時の適切な医療救援活動および被災者に対する長期的な支援活動に至るまでの様々な貢献ができるよう発展して参りたいと思っております。災害看護に関心のある多くの皆様のご参加をお待ちしております。


平成20年9月
日本災害看護学会 理事長 山田 覚


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