JSDNニュース
最新号

JSDNニュース No.36
~目次~(各記事のタイトルをクリックすると、その記事に飛びます)

日本災害看護学会
第20回年次大会のご報告

日本災害看護学会第20回年次大会大会長 増野 園惠
(兵庫県立大学地域ケア開発研究所)

去る8月10・11日の2日間、神戸国際会議場において日本災害看護学会第20回年次大会を開催いたしました。2日間で1,500名を超える方々が全国からご参加くださいました。
第20回年次大会のテーマは、「災害に立ち向かう看護のリーダーシップを探究する」でした。特別講演、教育講演、シンポジウム、パネルディスカッション、学会企画5題に加え、公募によるワークショップ9つ、交流集会7つ、口演56題、示説52題と多くの興味深いテーマで発表が行なわれました。また予定のセッションに加え、急遽、『緊急報告 平成30年7月西日本豪雨災害~我々(災害看護)は何をすべきか~』を開催いたしました。昼休みの時間帯にも関わらず、200名近くの方にお集まりいただきました。学会としての災害直後の活動を山崎理事よりご報告いただいた後、被災地から3名の看護職にご登壇いただき、直後の被災地の状況、専門職としての具体的な活動、職能団体による支援、今後の課題などをご報告いただきました。発生から1ヶ月が経ち、生活の再構築に向けて重要な時期であるにも関わらず全国的な関心が薄れつつあることが共有され、看護界が一丸となって次なる行動に向けて動き出す必要性を確認しました。さらに大会2日目には、20周年記念式典と記念講演会が催されました。南裕子先生からは「災害看護の発展:その軌跡と未来への展望」と題して、これまでの災害看護の発展の歩みと今後に向けた期待についてご講演がなされました。また、日本学術会議会長であり霊長類研究の第一人者である山極壽一先生からは「人間にとって安全・安心なコミュニティーとは何か」と題してご講演いただき、進化との関連から安全・安心なコミュニティーを考える機会となりました。
大会2日間を通して、災害時に看護が人々の生活に寄り添い、深く関わり、被災による健康への影響を低減させ、被災者の生活の再建に重要な役割を果たしていることを改めて確認することができました。それとともに、災害看護を可視化し、制度・政策への発言力を高めていく必要があることを共有しました。
日本災害看護学会発足20年の節目に、学会発足の地である兵庫県で第20回年次大会を盛会のうちに開催することができましたことを、関係者を代表し感謝申し上げます。


日本災害看護学会第21回年次大会
大会長挨拶

日本赤十字北海道看護大学 尾山 とし子

この度、日本災害看護学会第21回年次大会を日本赤十字北海道看護大学ならびに、国立大学法人北見工業大学で開催させて頂くことになりました。会期は2019年9月6日(金)と7日(土)の2日間です。
メインテーマを「平成を紐とき、次代に挑む災害看護」と致しました。平成においては、阪神淡路大震災、東日本大震災に代表されるような未曾有の災害が次々に発生しました。さらに、異常気象が原因なのか毎年のように各地で起こる水害や土砂災害にも目が離せません。そして、北海道人として最もショッキングだったのが、震度7を記録した胆振東部地震です。地震の脅威だけではなく、ブラックアウトと呼ばれる、全道に及ぶ停電が引き起こしたライフライン途絶による生活の不自由さを今だに忘れることができません。これからの災害は、いつでも、どこでも、誰にでも、起こり得るという認識を持ち、誰もが人々の命や暮らしを守る手立てを考えなければならない時が来たのだと思うのです。
それゆえ、次代の災害を担う看護は、施設内だけではなく自ら積極的に地域へ飛び出し、減災・防災・備災のために持てる経験知を発揮する必要があると考えます。日常の延長上にある非日常への構えを地域の人々と共に獲得し、行動に示す時ではないでしょうか。
来年は、元号が変わります。そして、災害看護学会も記念すべき第20回を終え、第21回と時を進めます。第21回目を北海道の被災地に思いを馳せながら、北海道から新しい災害看護の一歩を踏み出していけるような学会にしたいと思います。
また、北海道の9月は豊穣の月でもあります。自然の恵みに感謝すると同時に、自然の脅威に畏敬の念を持ちつつ、楽しく、美味しく、実りある学会となりますよう、多くの皆さまのご参加を心よりお待ち致しております。


第20回年次大会市民公開講座
「災害時における被災者の健康生活支援と支援者のストレスケア」を開催して

社会貢献・広報委員会 寺田 英子

本学会の市民公開講座を8月11日に開催しました。本講座では、「災害時における被災者の健康生活支援と支援者のストレスケア」をテーマとして、前兵庫県看護協会会長 中野則子氏にご講演いただきました。中野氏は、阪神・淡路大震災や東日本大震災の時には、保健師として避難所や仮設住宅、復興住宅においての保健活動、復興に向けた活動に尽力され、その後の平成28年熊本地震などでは兵庫県看護協会会長として継続的に支援活動を行ってこられました。
ご講演は、それぞれの災害の活動経験をふまえた教訓と課題を、たくさんの画像とともに具体的にお話いただきました。その内容は、災害後の健康生活支援は災害関連死や孤独死を予防し被災者の復興までの中長期にわたる活動であること、兵庫県看護協会の「まちの保健室」による災害支援の実際、こころのケアで留意すること、支援者に対するメンタルヘルスケアの体制づくりなど具体的な対応とその重要性についてです。これらの活動の教訓として、災害に対する備えと家族と地域コミュニティの大切さ、官・民・学の協働や平時からの防災・減災に向けた安全で安心な地域づくりの大切さを訴えられました。また、来場者に「少子高齢社会の中で、皆さんの地域では平時からの備えの状況はどうですか?」と問いかけた後に、具体的に何にどう取り組むのかが示され、「自ら災害に備えた取り組みを実践しましょう!」と災害に備えて市民一人ひとりが行動することの大切さを強調されました。
講演会場の前には神戸市と兵庫県看護協会のご協力を得て防災グッズの展示コーナーを設けており、多くの方がひっきりなしに訪れ非常食や段ボールベッド、簡易トイレなどに興味と関心を寄せていました。
来場者数は約200人で、講演後のアンケートでは、「実体験に基づく講座で、支援の様子がよくわかった」「こころのケアに、誰がどのように関わったらよいかがわかった」「平時の備えの大切さ、被災した時の心構えが理解できた」などが寄せられました。
本学会が20周年の記念大会の年ということで、講演で発信されたメッセージは翌日の神戸新聞に掲載され、さらに広く多くの人々に伝えることができたと感じています。ご協力いただきました皆様には深く感謝を申し上げます。


平成30年7月豪雨災害
「平成30年7月豪雨」被災地に先遣隊を派遣

ネットワーク活動委員会 担当理事 山崎 達枝

日本災害看護学会は、大規模な災害が発生した場合、被災地に先遣隊を派遣する体制を有し、現在10名が登録しています。この先遣隊の派遣は、災害に特化した当団体に特徴的なシステムで、災害看護の専門家として被災地に入り、健康問題、看護ニーズ等の情報収集と査定を行い、どのような支援が必要とされているのかを判断します。査定を行う際には、被災者へのケアも行いながら支援体制を整え、必要な情報提供、助言や関連機関への橋渡しを行います。
この先遣隊は、まだ記憶に新しい6~7月の豪雨災害の被災地でも活動を行いました。台風7号及び梅雨前線等の影響による記録的な大雨は、四国地方で1,800ミリ、東海地方で1,200ミリを超え、未曾有の被害をもたらしました。この状況から我々は、この集中豪雨を大規模災害と判断し、山本理事長・南副理事長に先遣隊の派遣を打診、7月7日に派遣が決定されました。9日には岡山県真備町の避難所にて先遣隊員1名と記録者2名が活動を開始し、その後も、岡山県総社市、広島県広島市・三原市・熊野町(13日~)、愛媛県大洲市(15日~)へ順次隊員を派遣しました。
先遣隊は、被災した皆様に寄り添いながら、避難所や地域の生活環境の把握、ニーズ調査に努め、必要な物資の提供、さらに中長期支援に繋ぐために専門職への紹介等々を行いました。また、そこで知り得た情報をホームページに掲載し、多くの方々に情報提供するなどの活動を行って参りました。
先遣隊の主な目的は、急性期~亜急性期の支援活動であるため、被災者の避難状況や現地支援体制がある程度確立されたと査定できたところで終了となります。被害状況の全容解明や全避難所のニーズの把握までは至りませんが、後続の支援隊に引き継ぐ重要な役割を担っています。7月の豪雨災害での活動期間は9日~17日までの9日間で、現地のコマンドコントロールの仕組みや支援体制が拡充されたと判断できたところで、先遣隊を引き上げることといたしました。
活動期間:9日間
派遣人数:先遣隊6名、記録担当者8名(延べ人数:先遣隊22名、記録担当者18名)
皆様それぞれ勤務先がある中で、突然の打診にも関わらず快く派遣に応じてくださいました。また、公文書の発行や旅費等の管理を引き受けてくださった事務職の皆様にも、深く感謝申し上げます。


平成30年7月豪雨災害、支援者を支える

社会医療法人同心会 西条中央病院 NPO法人Both-AI
災害看護専門看護師 趙 由紀美

私は生まれ育った愛媛県西条市の二次救急病院での災害対策整備とともに、行政と連携した地域防災活動を続け、今年6月末に災害看護を実践するNPO法人を設立しました。平成30年7月豪雨災害では、支援者を支える活動を継続しています。
7月6日は愛媛に滞在中の友人が被災地の支援活動に向うための後方支援を行いました。発災前の情報から、現地支援者の心身のストレス軽減に繋がる支援が必要と考えたためです。友人の広島入りを確認後、愛媛を中心に情報収集していたところ、日本災害看護学会先遣隊による岡山への派遣に帯同するようお声がけ頂きました。現地カウンターパートとなる看護教員と個人的ネットワークでも繋がっていたため、メールでの相談に応じながら関係性の構築に務め、派遣期間中は希望に応じて同行しました。現地の保健師や介護職員、助産師の対応なども拝聴する機会も得ました。ご指導の元で活動に参画させて頂き感謝しています。
7月24日、岡山で訪問看護を行う吉村さん(仮名)と出会いました。吉村さんはご自身と管理者のご自宅や事業所が水害で全壊となる中、利用者への避難呼びかけや安否確認をし、7月10日に事業再開しています。支援団体等との関わりが増す状況から、傍で思考整理やロジスティクス機能を担う支援が必要であると考え、週1回の同行支援を開始しました。具体的には、行政や地域内外の団体・個人との面会同席、書類作成、地域支援事業の準備、電話やSNSでの相談にも応じています。半年間は継続すると最初に伝え、期間伸縮は互いの状況を鑑みて一緒に考える予定です。
被災地で支援を続ける中、地元では災害に備えるための教育支援が求められます。介護支援専門員向けの講演では、事前打合せで主催者や行政職員と情報共有し、喫緊に取り組むべき課題が浮き彫りになったため内容を調整しました。当日は124名の参加があり、被災地からの声を盛り込んだ講演と課題解決に向けてのワークショップを行いました。被災地で発生している課題を、地域特性を踏まえながらも来たる災害への備えに結びつけることも私の役割と認識しています。
現在も解決すべき課題は山積していますが、人々の自尊心が災害時にも維持されるよう、環境を整えるという看護の基本に立ち返りながら今後も地道に活動していきます。


平成30年7月豪雨での支援活動
~災害ボランティアセンターにおける救護・衛生班として~

高知県立大学大学院看護学研究科
共同災害看護学専攻5年一貫制博士課程
野島 真美、杉本 和幸

平成30年7月豪雨で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。高知県立大学大学院共同災害看護学専攻の院生4名は2名ずつのチーム編成を行い、愛媛県宇和島市において7月12日より3回に渡り災害ボランティアセンター(以下、災害VC)および宇和島市役所にて活動を行いました。今回は、災害VCでの救護・衛生班としての活動について報告します。
愛媛県宇和島市では今回の豪雨で11名が亡くなり、最も被害が甚大であった吉田地区では浄水場が被災したことから、6,568世帯で断水が起きました。さらに、床下・床上まで土砂が流入した民家も多く、特に吉田地区の特徴として独居高齢者や高齢者夫婦世帯が多く、生活再建と災害時要配慮者支援に早急に取り組んでいく必要がありました。そこで、発災2日後には宇和島市社会福祉協議会内に災害VCが設置され、院生2名はボランティア及び住民の健康管理を行う目的で、災害VC内に救護・衛生班を立ち上げ熱中症・感染症対策に取り組みました。活動内容としては、熱中症対策としてボランティアの休憩時間の確保と水分・塩分摂取を重点的に促すとともに活動環境の確認や整備、健康管理を行い、感染症対策としては、靴洗浄や手洗い・うがいを徹底しました。また、今回の活動では巡回型の体制を取り入れることで作業環境を確認し状況に即した支援を行いました。さらに、現場での応急処置を施すことで、熱中症の重症化や感染症発生を未然に防ぐことができました。これらの活動は地元の医療機関へと引き継ぎ、活動が継続できたことも成果の一つではないかと考えます。
次に、災害時要配慮者支援を目的とした戸別訪問では、断水によるトイレや洗濯・入浴など日常生活に関する課題が明らかとなりました。特に、訪問先では住民の方とともに土嚢や生活用水を運ぶなかで、高齢者の方々にとって給水所まで水を汲みに行き、重い水を抱えて帰るという一連の作業は肉体的精神的に大きな負担となっていることも分かりました。さらに、発災から2週間以上が経過し疲労も限界に達し今後の不安等を表出される方も多く、「看護師さんに聞いてもらえて良かった」と安心して涙を流される方もおられ、専門職としての関わりの必要性を改めて実感しました。
今回、災害VCに救護・衛生班として関わり、多職種連携の中でボランティア及び住民の健康と生活を支援できたことは協働・調整という側面からも大きな学びとなりました。また、長期間に渡って災害VCで活動を行い住民ニーズに即した活動を立ち上げ継続できたことは、現地の皆様のご理解とご協力、そして多くの方々からのご支援のお蔭であると心から感謝申し上げます。今後も高知県立大学宇和島支援プロジェクトとして継続的に関わり、復興・復旧のお手伝いができればと思います。

 


編 集 後 記

社会貢献・広報委員会 松清 由美子

平成最後の夏は、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震、平成30年7月豪雨、台風21号等、本当に多くの災害が全国各地で発生しました。今回、西日本を中心に広範囲に被害をもたらした7月の豪雨災害で支援活動を展開した本学会先遣隊、災害看護専門看護師、災害看護学専攻大学院生の方々の活動を掲載しました。ニュースレターで様々な災害支援活動の情報を発信することが、今後の災害看護に繋がることを願っております。
また、8月には日本災害看護学会発足20周年を迎えて、第20回年次大会が神戸で盛会のうちに終了いたしました。社会貢献・広報委員会が企画・開催した市民公開講座では、地域コミュニティの大切さと災害に備えて行動することの重要性を痛感しました。
今後も学会員の皆様に災害看護に関連する情報を発信して参りたいと考えております。皆様からのご意見をお待ちしております。





NEWS LETTERのご意見、ご感想をお寄せください。お待ちしています。
宛先:学会事務所まで




Message

会員数:2017年12月末現在

名誉会員:4名
(うち2名は物故会員)
個人会員:1,469名
組織会員:39組織
賛助会員:6組織

Link