JSDNニュース
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JSDNニュース No.32
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日本災害看護学会 第18回年次大会 報告

久留米大学医学部看護学科 三橋 睦子

2016年の日本災害看護学会第18回年次大会は、8月26日(金)・27日(土)の両日に、福岡県久留米市の久留米シティプラザにて開催いたしました。メインテーマは、「災害看護の経験を紡ぎ叡智へ」~「いのち」と「くらし」と「こころ」を織り籠む~」でした。これまでの多くの災害において命や暮らし、心を救う経験を基盤に培われてきている知識・技術・ネットワークを、絣を紡ぐように、優れた叡智が獲得できるようにとの願いを込めて企画致しました。
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故後5年を迎えた今年4月に、熊本で、九州では想定していなかった震度7の地震が発生しました。隣県でもあり開催時期について懸念されましたが、まだまだ復興には時間を要する中で、特別企画の「熊本地震特設ポスターセッション」だけではなく、口演・示説の一般演題においても多くの熊本地震関連について御発表頂きました。熊本地震での災害看護の取り組みや現状の課題を早く情報提供するという重責を果たすべく強い意思を感じました。また、熊本応援として企画した、熊本県出身の行定勲監督のご講演「故郷くまもとを想う」および「うつくしいひと」のチャリティー上映は好評で満席となりました。鑑賞料金は全て熊本地震の義援金として寄付させて頂きました。
東日本大震災以降、特に被災地の初期対応や復興には、多職種における広域支援が重要とされ、広域支援のネットワーク構築に主眼が置かれています。本シンポジウムにおいては、災害支援のご経験を持たれている災害看護専門看護師コース終了の寺田英子様、感染管理認定看護師妹尾正子様、皮膚・排泄ケア認定看護師千葉励子様、精神看護専門看護師野田智子様、あるいは離島災害経験者である消防団員の久木山栄一様、保健所技術主幹の宮ノ下洋美様、中学校非講師永石義信様、熊本地震の緊急討論では精神看護専門看護師の立場から宇佐美しおり様、医療従事者として山下典雄様、都市・地域計画の立場から塚原健一様、建築学の立場から筧淳夫様など、多方面から専門職の皆様に大災害への備えと対応を中心に情報提供と熱心な意見交換・討論を頂き、災害看護整備の方向性や視座を共有する機会となりました。その他ワークショップ5題、交流集会4題、7つの学会企画が発表され、放射能汚染を想定した除染活動訓練のシミュレーションでも多くの見学者があり、全参加人数は1,400名を越え大盛会に終わりました。ご支援・ご協力頂きました皆様に衷心より御礼申し上げます。
本学会での学びが、これからの大災害への備えとして、あるいは災害看護の発展の一端に寄与できたのであれば幸甚です。
最後に、実は、会場の久留米シティプラザは2016年4月にオープンしました。全館貸し切っての学会としては「こけら落とし」の会場で、日本災害看護学会を開催させて頂き、お陰様でこの2日程町が活性化しました。重ねて深謝申し上げます。


第19回年次大会 大会長挨拶

鳥取看護大学 近田 敬子

この度、第19回の日本災害看護学会年次大会を、2017年8月25日(金)と26日(土)の2日間にわたり、鳥取県立倉吉未来中心および三朝温泉において開催させていただくことになりました。第18回の盛大な学術集会の後で、身の引き締まる思いです。山陰の地での、本大会の開催ははじめてとなり、鳥取らしい特徴を醸し出していけたらと願っております。皆様とともに創り上げていく大会にしたいと念じており、多くの皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げます。
本学術集会のメインテーマは、「ソーシャル・キャピタルの醸成と災害看護」といたしました。日本災害看護学会では、あらゆる災害時の看護支援活動の実践知を集積し、災害看護学の体系化が図られてきております。看護の場合、発災時は勿論のことですが、様々な災害における中長期での役割が大きく、支援活動の継続性が求められます。これらの支援を重ねていくと、必然的に「備え」の重要性が浮かび上がります。これまでも多々、学会テーマになっているところです。
第19回の年次大会においても災害に対する「備え」を中心概念に置き、互助的な人間関係が希薄になった近年において、21世紀の成熟社会のあり様と重ねて、災害支援における互助性・互酬性のある地域の構築に焦点をあてて、プログラムいたします。また、平成26年4月に発生した熊本地震における新たな側面を見せている災害支援活動からも多くの学びを得たいと思います。
鳥取県は温泉の豊富な地域です。本大会の特徴の一つとして、三朝の温泉地での交流セッションを企画いたしました。多くの皆様と交流を深めながら、議論が沸騰することを楽しみにしております。なお、温泉地でのセッションとともに、温泉旅館での懇親会も予定しております。足湯や入湯サービスをも利用していただき、癒しの効果を堪能していただければ、幸甚に思います。また、二十世紀梨の初出荷の時期であり、その他の食べ物も新鮮でおいしい地域です。食べることにおいても楽しんでいただければ幸いです。
なお、演題登録期間は2017年2月22日から4月26日といたしております。詳しくは追って「日本災害看護学会第19回年次大会」ホームページで順次、ご案内していきます。


27年度災害看護教育活動委員会活動報告
-タイムリーな災害看護教育の課題に取り組む-

災害看護教育活動委員会メンバー
小原真理子・斉藤正子・三澤寿美・酒井明子・前田久美子

災害看護教育活動委員会では、年間の活動の一環として、タイムリーなテーマを基に教育セミナーと学会企画の交流集会を開催している。その他27年度は災害看護活動調整員認定制度の検討に取り組んでいる。このねらいは、被災地病院における災害看護活動のコーディネートができる、また避難所・在宅避難などの避難生活に対応し、災害看護の視点を持ったコーディネートできる人材を育成することである。今回は27年度教育セミナーと学会企画交流集会について報告する。
平成28年5月22日(日)日本赤十字看護大学広尾キャンパスにおいて、平成27年度災害看護教育セミナー テーマ「語り合おう!?災害看護の教授法・国家試験対
策?」を開催した。学会員ならびに非学会員32人の参加があった。福井大学 酒井明子先生の基調講演のあとに、国際医療福祉大学小田原保健医療学部 山下留理子先生と、上尾市医師会上尾看護専門学校 田村益美先生より、実際に実施している災害看護の授業の方法や内容について、話題提供をしていただいた。看護基礎教育課程において災害看護を学ぶ学生からは、実際の講義・演習やフィールドでの学びの内容について発表があった。参加者からは、災害看護の教授法や国家試験対策の苦労、戸惑いや悩み、教科目としての時間や予算の限界などに関する発言があり、参加者同士で情報共有・情報交換を行った。現在、看護師国家試験出題基準における看護の統合と実践では、目標Ⅱ「災害看護について基本的な理解を問う」があるが、災害看護に関する教科目については、時間数も内容も各学校の裁量に任されている。そのため、看護基礎教育課程における災害看護の到達レベルの統一を図るには困難な状況があることが確認された。災害看護教育活動委員会として取り組むべき今後の課題として、災害看護の教育方法の充実のための研修や学習の機会の提供の必要性を再確認した。
平成28年8月26日、第18回日本災害看護学会企画Ⅱ.教育活動委員会主催.テーマ:「動き出す!災害看護CNS」を開催した。今回で「災害看護のCNSシリーズ第3段」となる。サブタイトルは、「4.14,4.16熊本地震被災地での活動を通して、CNSの役割を見出す」として熊本地震での活動や平時の活動から災害看護のCNSの役割について話題提供を行い、会場の参加者と語り合った。最初に、日本赤十字看護大学大学院.在学中の香川真実さんが「指定避難所の救護所での傷病者や車中泊における被災住民への対応、地元の支援者支援の重要性」を語った。続いて福井大学大学院.災害看護専門看護師教育課程修了・公立丹南病院の窪田直美さんが「画一したルールにとらわれない調整や平時からの受援力を高めることが大切」と述べた。次に日本赤十字看護大学院修了・西条中央病院の趙由紀美さんが「統括者支援を行い、調整内容のアドバイス。平時から地域防災活動を行い、『災害看護』を周知する」について語った。最後に日本赤十字広島看護大学院修了生・日本赤十字社医療事業推進本部.看護部看護管理課の石崎ゆかりさんが「調整として適材適所へ人材を派遣することが大切であり、倫理の能力が必要」と語った。ディスカッションでは、会場の参加者から「災害看護のCNSと他の領域のCNとの違い」についての質問があり、災害看護のCNSは卓越した実践能力はもとより、糖尿病疾患の患者などに対する災害時の対応を他領域のCNSとともに協働して備えることである。また、「CNSの独自性」についての質問に対しては、同職種・他職種とのネットワーク、個人で入る、支援や組織の組織で入って行く調整能力が必要とされるなど活発な意見交換がなされた。早期に災害看護のCNSが認定されることが期待され、活動の場や役割を確立することが必要であると締めくくられた。


いのちをまもる方法講座
「AEDの使い方 救急車の呼び方」を開催して

社会貢献・広報委員会 牧野 典子

市民公開講座は、久留米シティプラザ5階大会議室1(第4会場)で開催されました。テーマにあるようなAEDや救急車を呼ぶ必要がある、緊急を要する状態の人に遭遇した場合を想定して、委員会メンバーにより、「命にかかわる危険な病気について、救急搬送が必要な脳卒中や心筋梗塞の前兆や症状、後遺症について」わかり易く説明しました。配布したA4サイズで電話の前に貼っておける「救急車の呼び方」用紙は、救急車を呼ぶ際に「どのような状態ですか?」と電話で聞かれたら「見たままの状態を的確に答える」ための参考にしていただくため用意し、また、救急車が到着するまでの間にできる救命手当や応急手当についてもお話ししました。参加者は皆うなずきながら聞いていました。
その後、日本赤十字社福岡県支部講習普及係の講師2名が「心配蘇生法とAEDの実技」を約60分間行いました。倒れている人に近づくその前に周囲の安全を確認することから始まり、意識の確認、協力者を求め、呼吸を確認して、胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返し、到着したAEDを使い、救急車が来るまで胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返します。初回はゆっくりと進めていただき、参加者も少し遠慮がちな声の出し方でしたが、2回目、3回目は友人を呼ぶように自然な呼びかけで手順の流れもよくなり、一連の動作が完了すると拍手が起こっていました。
参加者は32名でした。看護師も何人か見えていて「日常の病院での救命と違い、災害時には自身の安全確認が必要だと理解した」との新たな気づきを感想文に記述されていました。市民からは「AEDを使用するのが初めてでした。遭遇することがあれば率先して動くようにしたい」と体験を実践に生かしたいという前向きな感想があり、また看護学生は「大学でAEDを学んだが復習になりよかった」と書いていました。初めて参加した市民も、看護職も看護学生もそれぞれ貴重な体験になったようです。
残念なことは、会場が5階にあり、4階からのエスカレーターは受付前からとは異なる場所にあったので「会場に着くまでに迷ってしまった」と参加者からお叱りを受けたことでした。市民公開講座の会場や案内表示については今後の課題です。
最後に、参加者から今後の市民公開講座で開催してほしい講座をたくさん提案していただきました。次回からの参考にさせていただきたいと思います。会場係の皆様はじめボランティアの看護学生のご協力に深く感謝申し上げます。


熊本地震
益城町プロジェクト開始に至るまでの経緯について

ネットワーク活動委員会 夏目 恵美子

熊本地震に対する中長期的な支援ニーズについて、日本災害看護学会としての中長期的支援の可能性を調査するため下記の日程で熊本県益城町を訪問しました。
期間:平成28年6月20~22日、7月4日、8月1日
調査者:石井 美恵子(ネットワーク活動委員会委員長)
夏目 恵美子(ネットワーク活動委員会委員)
訪問場所:現地ではDMAT事務局と連携し、益城町役場、益城町保健福祉センターハピネス、熊本赤十字病院、高齢者住宅おいけ(福祉避難所)、公民館飯野分館(一般避難所)を訪問しました。
益城町役場では「福祉避難所連絡調整会議」に同席させていただきました。そのうえで 益城町保健福祉センターハピネスの保健師の方とも話し合い、「保健医療福祉チーム組織体制の課題」「応急仮設住宅対応の縦割り体制の課題」について、学会として中長期的な支援の可能性を検討しました。また益城町では「地域ささえあいセンター(仮)」を作り、今後の保健活動を推進していく予定であるとのことでした。
福祉避難所連絡調整会議では8月末の福祉避難所解消に向けて準備が進められており、仮設住宅へ避難した方への横断的な組織対応が必要と思われます。8月1日現在避難者は約1,200名、福祉避難者は50名と減少傾向にありますが、災害救助法申請に向けて書類などを準備、益城町から国や県に申請を出している状況であるとのことです。
8月1日の時点では仮設住宅も第三次募集が始まり、仮設住宅への移動が進んでいるようです。指定避難所も8月1日現在避難者数は1,041名となり、前回7月11日から450名ほど減少しており、益城町としては災害救助法の適応申請に向けて準備をしているとのことでした。横断的な組織対応が必要と思われる仮設住宅整備、コミュニティづくり、健康推進対策、孤立死予防等の計画について、全体調整を行うリーダーシップを調整するため、学会としてのかかわりを考えていきました。その結果、熊本大学 宇佐美教授のご協力のもと、益城町保健福祉センターハピネスの保健師と共同で応急仮設住宅対応の縦割り体制の課題解決に向けた取り組みを、日本災害看護学会として支援していく方針となりました。
現在は、宇佐美教授を中心としたメンバーが益城町の保健師と協力し合い、仮設住宅への保健訪問を行っています。

 


2016年8月連続台風による
北海道水害における初期調査

ネットワーク活動・調査調整部 玉井 留理子
(市立千歳市民病院)

北海道は8月16日からの大雨で降雨量が観測史上を更新する地域も出たため、避難勧告、避難指示が発令された。その後も、豪雨はおさまることなくそのまま台風7号が上陸、引き続き11号、9号、10号と連続で台風が襲い、被害は拡大していった。このような大きな被害を受けたのは2004年の台風18号時10名の死亡者が出て以来である。9月12日時点で死亡者3名(台風10号から引き続いた大雨による死亡1名を含む)、行方不明者2名、軽傷複数名と人的被害が出た。死亡理由は河川の氾濫によるもの、自動車が走行中、規制に気付かず崩落した道路から川に転落したもの、被害状況の監視中に土砂災害に巻き込まれたなどであった。
河川は堤防の決壊、25ヶ所で氾濫による浸水被害があり、冠水、橋げたの流失、橋の崩落、土砂災害、床上・床下浸水と広範囲の水害となった。これにより住宅被害は全壊から一部損壊を含め540件余り、床上浸水240件、床下浸水364件という状況であった。各地域の大動脈を担っている幹線道路、峠、JR路線に被害が大きく一時的に孤立状態となった地域もあった。また高速道路以外、当初は空路も欠航、国道、道道合わせ多くの区間が通行止めとなった。JRも復旧している区間はあるが、根室線・石勝線では開通までに1ヶ月以上が費されると思われる。被害の全容がつかめず見通しが立たない路線もあり、住民や物流に影響が出ている。ライフラインは一部の地域で停電と断水を残し、生活用水としての水道利用は9月中旬から可能となった。
避難所は最大323ヶ所で避難者は最大8,066名にのぼった。9月6日、最後まで避難指示が出ていた上川管内南富良野町と十勝管内新得町が解除となった。避難所が立ち上がっていた9月初旬、北海道看護協会事業課に災害支援ナース派遣の確認をしたが、北海道看護協会は行政(北海道)と「災害時の看護職医療救護活動に関する協定書」を締結していることもあり、今回は北海道災害対策本部からの支援要請がないため派遣の検討をしていないという回答だった。
一連の台風被害に対し8月30日に翻り災害救助法が適用され、9月16日に4つの台風を一括した激甚災害指定を受けた。また南富良野町は局地激甚災害に指定されたことで復旧事業に対する支援は拡充される。台風10号以降も記録的な大雨による土砂災害で1名死亡者が出ているため、今後も新たな台風発生に伴い、既に地盤が緩んでいる地域では被害の拡大が懸念されている。想定をはるかに超える雨量となった今回の被災を教訓に水害対策(ハザードマップ・堤防整備・避難所の立地・土砂災害等)への課題が明らかになった。9月に入り一気に気温が下がり、今冬の降雪量が気がかりなところである。農業、土木、水産・林業、商工業の被害が甚大であり、冬期間に入る前の復旧・復興が急がれている。
(情報は北海道新聞、北海道総務部危機対策課より収集)


2016年4月発生の熊本地震に対する募金のお願い


「平成28年熊本地震」は、震度7を記録する上に1,000回を超える余震がみられ、多くの方々が被災されました。中・長期的な支援の必要性が考えられる今回の災害に対して、本学会では、被災された会員および看護職による災害看護活動を支援するために、募金を開始しています。皆様のご厚志は、本学会がこの趣旨に従って責任をもっていかしてまいります。この趣旨に賛同してくださる多くの方々からの募金を頂きたく、よろしくお願い申し上げます。

郵便振替口座
名義:一般社団法人日本災害看護学会募金活動事業
口座番号: 00920-3-318582
※振込手数料のご負担をお願いいたします。
銀行など他金融機関からの振込用口座番号
〇九九(ゼロキユウキユウ)店 (099) 当座0318582

一般社団法人日本災害看護学会募金活動委員会

 


編集後記


平成28年は、地震ばかりでなく日本全国で水害が多く発生しました。今までの防災対策に加えさらに警戒が必要だと感じる年となりました。九州地方では熊本地震が発生し、多くの医療者やボランティアなど多くの方が支援に向かいました。
その九州地方の福岡県で8月に、第18回日本災害看護学会年次大会が久留米で開催されました。私たち社会貢献・広報委員会は、この学会において「AEDの使い方 救急車の呼ぶ方」をテーマに市民公開講座を企画・開催しました。会場には多くの市民の方や看護学生の方等に参加して頂き、高齢化が進む日本において「自助・共助」を考えるきっかけになったのではないかと思います。私たちは、これからも時代のニーズに合わせた企画を提供していきます。

(社会貢献・広報活動委員会 菊地 睦委員)




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会員数:2016年6月末現在

名誉会員:4名
(うち2名は物故会員)
個人会員:1541名
組織会員:42組織
賛助会員:6組織

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