「平成20年8月末豪雨」災害後のボランティア活動に参加して

春日井市民病院看護師(愛知医科大学看護学部研究科)  太田有亮

 

2008年8月26日から31日にかけて東海地方では停滞した前線の影響で、猛烈な雨が降る大荒れの天気となり岡崎市においては死者2名、床上浸水1124棟、床下浸水3147棟(内閣府9月10日現在の発表)と大きな被害をもたらしました。この豪雨について気象庁は「平成20年8月末豪雨」と命名した。 豪雨による被害に対して岡崎市の社会福祉協議会はボランティアセンターを開設した。私は9月1日に被災地に出向き「看護ボランティア」のニーズを確認したところ、一般ボランティアの募集のみでしたので一般ボランティアとして活動をさせていただいきました。経験からの学びを報告させていただきます。

災害時のボランティア活動ははじめての経験であり不安もありましたが、被災者の生活に密着した活動が経験できる良い機会と考えました。活動内容は被災世帯・被災者とともに家財道具の運び出し、室内の泥だし、清掃などの手伝いでした。具体的な活動としては次の状況でした。

依頼のあった独居の男性の家を訪問したところ、家の中は畳があげられ、机などのうえにも多くの荷物が積み上げられたまま、床掃除をしているところでした。「夜、外を見たらもう床上に水が迫ってきて、リウマチなどで体中が痛いが必死になり畳や床の上の家具を高い所にあげた。その時、無理をしたので手足の痛みが強くなってきた。ぼちぼちと片づけようと思ったけど何も出来ずに困っていたところだった。手伝ってくれて本当にありがとう」と繰り返して言われました。ボランテイアが手伝うまでは、家のなかで泥水に浸かった家具や畳などを前に茫然としていたのではないかと思いました。さらに、その方は高齢者のように見受け、痛みなどの健康状態も気になり、不安も抱えているではないか、が予測されたので一緒に片付けをしながら話しを聞くようにしました。話からは真夏、泥水、力仕事、目途がつかない後片づけ、持病,疲労などから生じる健康不安などの看護ニーズが潜在・顕在化しているのではないかと感じました。このように一般のボランテイア活動の実際、記録、情報からも看護ニーズを読み取り、看護活動に活かすことが必要であると思いました。

訪問先からボランティアセンターに戻る際に被災地を見渡すと、道路は被災世帯から出された災害粗大ゴミの和洋タンスや畳などの大物・家財道具であふれ塞がれていました。さらに、真夏という気候のため腐敗臭気も強烈に臭い、“ものすごい状態”となっていました。しかし、臭いや真夏の暑さにも関わらず、さまざまな年齢のボランティアが大勢、集まり活動しており、エネルギーに溢れているようにも感じました。ボランティア元年といわれる阪神・淡路大震災以降のボランティア活動は、世のなかに確実に定着していることを実感しました。

災害時におけるボランティア活動は、被災者が「助けられた,助かった」という思いにいたるだけではなく、支援した側も何らかの達成感を覚え,このことは人として「豊な思い・自信」を感じることが出来るのではないかと思いました。さらに、活動を通して感動したり、共感したり、無力感を覚えたり、悩むなどのいろいろな感情が湧くなかで確実に人間性が豊かになっていくことができるのではないかと,ささやかな体験から学ぶことができました。ボランティア活動は困っている人に手を差し伸べ、共に支えあうということです。このことは看護の基本となるものと同じであると再認識させられました。

私の「災害看護メッセージー備えー」として平時はボランテイア活動を通して学び,災害時にはさまざまな看護ニーズに応え,なによりも「被災者に寄り添う」ことを実践できるように学んでいきたいと思います。そして,「困っているときはお互い様」という合言葉をすべての看護職と共有していきたいものです。

 




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