JSDNニュース No.40
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一般社団法人 日本災害看護学会 第23回年次大会
9月4日(土)―5日(日)新潟県長岡市にて開催

長岡崇徳大学看護学部 山﨑 達枝

まず初めに、新型コロナウィルス感染症という目に見えない病原と闘っている全国の医療従事者の方々に心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。原因も明らかでなく、また治療薬も見つかっていない感染症への対応が、医療者にどれほどのリスクを与えているかを日々痛感させられるとともに、このコロナ禍によって、我々医療従事者が非常事態においていかに重要な職務を担っているかを改めて認識いたしました。
21世紀という現代社会においてこのような感染症が世界的に蔓延するとは想定外の事態でしたが、自然災害も多発し、激動する社会の中で、医療に求められる重要性はこの先もさらに大きくなっていくことでしょう。
そんな厳しい状況ではありますが、年次大会を開催できますことは非常にありがたく、また大きな意味を持つものと自負いたします。第23回年次大会のテーマを「災害多発時代に守りたい生命(いのち)とこころ~実践知をともに未来につなぐ~」としましたが、不測の事態においてどのような行動が求められるのかという指標を作り、実践知として残すことで、未来の災害に備えていければと考えています。また、医療従事者の精神的な負担が増す中で、全国から集まる皆様からの意見交換や繋がりを深める場となれば幸いです。
本年の学会の開催地である、ここ新潟県中越地域長岡市は、世界で有数の豪雪都市・特別豪雪地帯に指定されており、これまで地震・水害・雪害等々、多くの災害を経験してきました。そして、その度に、生活を再建し、復興を遂げてきた地でもあります。
長岡に移り住み、長岡崇徳大学に着任してまだ日が浅い1年目に今回の大会長を拝命しましたが、大会の趣旨に賛同し、快く背中を押してくださった本学中村学部長のおかげで、躊躇なく準備を進めています。また、企画委員として参加くださった教員と12名の学外からのメンバーの協力なしでは、開催に向け準備を取りまとめることはできませんので、ここに深く御礼申し上げます。
極めて厳しい状況の中での開催となりますが、この大会が日々命を守るために高い理想と大きな責務を負って仕事をされている皆様にとっての一助となれば幸甚です。


〈組織会員からの寄稿〉平成30(2018)年
北海道胆振東部地震での災害支援ナース派遣について

公益社団法人北海道看護協会 事業部事業課事業係長 黒田 恵

北海道胆振東部地震は、平成30(2018)年9月6日3時7分、北海道胆振地方中東部を震源として発生した。地震の規模は、マグニチュード6.7最大震度7で北海道では初めて観測された。直ちに、協会内に対策本部を設置し、災害レベル1とし、情報収集を行うとともに、日本看護協会への報告、研修中止の連絡、北海道庁との調整を行った。9月10日には、北海道から災害支援ナース派遣要請があり、登録している災害支援ナース531名が所属する226施設の看護代表者へメール・FAX・電話で派遣要請を行った。その結果140施設205名の災害支援ナースから活動したいと返答があり、9月13日から10月10日まで5避難所へ31班実62名の災害支援ナースを派遣することができた。災害支援ナースは、自らで現地までの交通手段を確保することになっているが、当時現地までは公共交通機関が使用できずタクシーの確保も難しいことから、レンタカーを借り上げ協会職員が送迎を担当した。協会職員が送迎したことから、災害支援ナースの集合場所を札幌と苫小牧2ケ所とし災害支援ナースが選択できるようにしたことで遠方から移動してくる災害支援ナースの負担を軽減することができた。また、日々の避難所や災害支援ナースの活動状況の把握がよりスムーズになった。しかし、派遣中、台風の影響で避難勧告が出され、支援関係者に対し宿舎待機の指示が出され避難所に残ったのは、町職員と災害支援ナースだけになったことで派遣期間の延長等により災害支援ナースにとって大きな負担となったことが今後の課題となった。
【災害支援ナースの報告書より】
各チームとミーティングを持ち、他の避難所と情報交換を行い、日々の活動にあたった。派遣当初は、各医療団体・ボランティア等の多団体が混在し、同じことを何度も聞くのは被災者へストレスになると考え、各団体と情報提供や調整を行い、必要な方への対応をした。数日経過すると、住民は日中仕事や自宅に戻り、避難所は高齢者と子供が多く災害支援ナースが常駐していることで安心感を得られているようであった。活動当初より、衛生環境を整える活動・エコノミー症候群予防、余震のため泣く子供や不安表出者へは話を傾聴しメンタルヘルスケア活動を行った。環境整備は、感染防止や転倒防止だけでなくキッズスペースやディルームも整えた。ディルームでは、午前中お茶の集い、午後は中学生の学習の場になっていた。また、来訪者や相談者に対しては、低血糖症状・転倒による受傷・感冒・頭痛・肩痛・湿疹咬傷・虫刺され・鼻出血・便秘などの対応をした。災害支援ナースからは、日々の臨床で忘れかけていた一番大切な看護に立ち返ることが出来た等の話が聞けた。
◎約1ヶ月にわたる避難所における被災者の支援に、ご協力をいただいた災害支援ナースと快く送り出していただいた災害支援ナースの所属施設の皆様に改めて感謝いたします。


避難所へ向け出発



避難所の様子



令和2年7月豪雨における支援活動
~日本赤十字社災害医療コーディネートチームとして~

熊本赤十字病院 手術センター看護主任 災害看護専門看護師 小林 賢吾

この度の令和2年7月豪雨により亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
令和2年7月豪雨により、熊本県では河川の氾濫、土砂災害、低地の浸水等が発生し、死者65名、行方不明者2名、全半壊600棟以上、床上浸水5,700棟以上に及ぶなど甚大な被害となった(熊本県、8月6日)。
本災害において、私は日本赤十字社災害医療コーディネートチーム(以下、日赤CoT)として、芦水地域(水俣市、芦北町、津奈木町)で活動した。同地域には「芦水地域保健医療調整本部」が設置され、DMATと共に本部運営を行い、日赤CoTは巡回診療・避難所支援の全体コーディネートを担った。
巡回診療の実施、避難所支援の状況把握と実施調整のために、芦北町役場保健師をカウンターパートとし活動を開始した。保健師との協議の結果、現在は避難所支援が中心で、他の地域では実施されている戸別訪問(健康調査)が実施できておらず、地域の自宅避難している要配慮者にアプローチできていないとのことであった。また、他の被災地支援、新型コロナウイルス対応にて支援保健師の十分数の確保が困難な状況にあることが判明した。そのため、自宅避難している要配慮者の二次的健康被害の増加、災害関連死発生の可能性につながる恐れがあった。そこで、救護チームが避難所の継続的支援も実施できることを提案し、巡回診療に加え、保健師が使用する記録媒体を用いた避難所支援(要配慮者支援、環境衛生対策、DVT対策、コロナ対策等含む)を担うよう調整を図った。
この結果、保健師をトップとし、救護チームが巡回診療・避難所支援、支援保健師が全戸訪問を実施する体制を構築することができ、災害により機能低下した地域の保健医療体制を整えることができた。保健師からは「日赤さんがいてくれたから避難所の健康管理においても助かったし、戸別訪問に着手することができた」との意見を得ることができた。そのため、保健師との関係性を構築し、困っていることを代行して実施し、保健師しかできない他の災害関連業務を実施するための支援を行うことができたため、保健師に寄り添った活動を実施することができたのではないかと考える。
ここでは支援活動の一部を紹介させて頂いた。最後に、被災地はまだまだ復旧・復興の道半ばであり、
一日も早く日常が戻りますよう心よりお祈り申し上げます。


救護班との避難所状況に関する打合せ



水が引いた後の芦北地域の様子



排泄ケアの工夫は災害時の備え

訪問看護ステーション火の鳥管理者・ミニむつき庵てあーてサロン代表 及川 敦子

2011年東日本大震災の経験から、“おむつ”に関心を持つこととなった。震災で勤務先の石巻市立病院が壊滅し、私は避難所や福祉避難所全体の医療物品管理を行うこととなった。避難所には全国から多くの支援物資が送られ感謝するばかりであったが、紙おむつはSとLLサイズが多く、必要なサイズはほとんどなかった。合わないサイズの紙おむつ使用は、尿漏れの原因となり、ライフラインが絶たれた状態では洗濯も行えず、汚染された衣類ごと破棄された。この経験が、「尿漏れを少なくする工夫はないか」と思案するきっかけとなった。
2013年念願の「おむつフィッター研修」(浜田きよ子氏主催)を受講した。自らの基本的なおむつの知識不足で、患者に不自由な思いをさせていたことに愕然とした。さらに、訪問看護を始めると、地域では“おむつ”に関する問題が山積していることがわかった。
排泄は、おむつを使用しても24時間気持ちよければHAPPYである。適切なおむつの選択や装着ができれば、おむつによる抑制・拘束から解放され動くことが可能となり、尿漏れも少なくなることでスキントラブルが減少し、嚥下が楽になることで食事摂取が可能となるなど…Quality of Life(QOL)向上につながる。そこで介護者のおむつに関する知識や技術向上を目的として、浜田氏による「暮らしを支える排泄ケア 生身の身体に向き合うこと」(2014年、石巻市)講演を企画した。2015年ミニむつき庵てあーてサロンを開設し、排泄に関する相談対応、研修・講演活動、おむつ検定などを行い排泄ケア改善に取り組んできた。
最近の活動は、災害時の訪問看護研究会作成パンフレット「3.11の教訓を活かした訪問看護の知恵袋」(齋藤正子氏代表、2016年)に排泄の工夫として一部掲載、特定非営利活動法人災害看護支援機構主催の、「災害時の備え“目から鱗”おむつの使用方法」(2018年)研修、日本災害看護学会第21回年次大会でワークショップ1「災害時の排泄ケアと技術」(2019年)協力などである。これらの活動から、排泄が多くの方に関心があることが分かった。そしてこの活動が、看護者から同僚へ、教育者から学生へ、住民から介護者へと情報が伝達され共有されていけば、真のQOL向上になり、災害時の排泄対策にもつながると考える。
一方、経済面はどうであろう。病院や施設では一元化により納入価を抑えているが、サイズが合わないと尿漏れで交換が増え、紙おむつ代金が高くなる。さらに、スキントラブル発生時は、紙おむつの種類変更ができず、治癒遅延となり、医療や介護保険料が増すことになる。QOL向上と経済効果を考慮した紙おむつの選択肢が増えることを望むばかりである。


高齢者施設での新型コロナウイルス感染症対策とこころのケア

立川介護老人保健施設わかば 事務長(保健師) 川野 和也

 当施設は、東京都立川市に平成11年に開所した入所100床(短期入所空床利用型)の介護老人保健施設で、通所リハ・訪問看護・訪問介護・居宅支援・地域包括の各事業所が1階に併設しています。これまで当施設は毎月延べ50~100名のボランティアの皆さんや地域包括支援センターの紹介による住民サークルが施設内で活動するなど多くの地域の方々と共に運営してきましたが、新型コロナウイルス感染症対策として2月25日より全面立ち入り禁止措置を実施し、併設施設も含めて感染対策を行いました。
職員体制の面では、体調不良の職員を出勤させずに済むように日中の介護職は通常よりも1名減で勤務シフトを作成しましたが、業者の納品業務やボランティアの皆さんが担ってくれていた介護補助業務は職員が代行する形になったため業務量は増加しました。シフト変更に合わせていわゆるリハビリは全面中止してリハ職員が実際の入浴ケアを専任で担いその中で生活リハを展開、夜間緊急対応マニュアルを改訂して夜勤を5名から4名体制で実施しました。カンファレンスや委員会等の会議も紙上開催としたため、職員間の情報共有を進めるためのメーリングリスト(全職員向け、役職者向け、施設向け、訪問向けの4種)を新設し、併設施設も含めた情報共有を行うことで統一した感染対策を実施することを目指しました。
入所者の方は、ご家族と会えない期間が長期化することによる不安を少しでも軽減できるように、月刊の広報誌「わかば便り」を施設ホームページにも掲載して普段面会に来られないご家族にも施設内の様子をお知らせし、新設の面会専用携帯電話とオンライン面会を活用していただきました。それでも日常は見慣れた職員とだけとの交流になってしまうので少しでも何かできないかという思いから職員有志でミニ演奏会を行ったところ、涙を浮かべて聴いてくださる方も多く、普段のボランティアさんやご家族との触れ合いが入所生活にとって良いアクセントになっているのだと感じました。
我々職員は通常業務だけでなく個人の生活も不自由を感じて余裕がない中、命だけを優先した感染対策だけに注力しがちになりますが、入所者は職員以上に不自由な生活を送っているわけで、こころのケアをしたうえでの感染対策という基本に立ち返ることが大切だと改めて認識をしました。


職員有志によるミニ演奏会の様子



大学院で学んだ災害看護を考える取り組み

石川県立中央病院 登谷 美知子

2007年能登半島地震の救護活動を機に私の災害看護への取り組みが始まった。同年DMAT隊員を取得し、2007年新潟県中越沖地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震と被災地での活動を行った。院内外では、日々の備えとして、院内災害訓練や職員への災害時の初動対応に関する教育、災害支援ナース育成研修、看護学生への災害看護講義と自身も災害看護研修に参加し見識を深めながら活動を行っていた。この取り組みから10年目を迎えた頃、増え続ける災害に対し〈これでいいのだろうか、もっと幅広い視野で災害看護を考えていく必要性があるのではないか〉という思いが強くなり、災害看護について研鑽を積むため大学院での就学を決意した。
大学院では、災害急性期での活動が主であった私のこれまでの経験は、災害に遭遇した人々のほんの一部分でありその時だけの見識でしかないことに気づかされた。災害に遭うという事は、一人ひとりの生活、暮らし、健康にどのように影響を及ぼすのか、また地域社会との関り、社会制度、システムや改革の必要性など多岐にわたり考える必要があった。特に災害中長期において、被災者の方から『自分のお金で物を買えた時、あー、ようやく自立できたと思えた。』という語りを聞かされた時は、全身に水を浴びたような感覚に陥った。自立支援というのは、被災者自らがそう思える何らかのきっかけが大切なのだと。そのきっかけを支援できる、支える(個人、地域、社会)体制づくりが必要であることを学んだ。
研究では、災害中長期での被災地の看護管理者の語りを通し、外部支援者を受けた(以下、受援)活動の思いと活動の実際についてまとめた。受援が行われた時間経過の中で、看護管理者としての悩みや責任を感じながらも、職場環境を整え常に外部支援者と看護職員との関係性を大事に奮闘、配慮し続けている看護管理者の思いと行動が影響し、看護職個人の活動の基盤となり原動力となっていた。煩雑な日々を乗り越え今日に繋がっているという自信へと変化し受援を肯定的に捉えられており、『どうなるんだろうか』と不安の中で手探り状態であったが、支援を受け入れることで、『自分たちがしっかりしなければ』と言う自立に向けた思いが芽生えたことも語られている。
どの災害サイクル、場面においても災害看護は人との繋がり、関係性が重要であること、物事の現象には目に見える形とその背景(目に見えないもの)が存在し、災害看護に限らず看護を行っていく上で、個人を視ること、更に個人を囲む地域、社会など背景を俯瞰的に視て、体系的に考えることで、個人や組織などが抱える問題について取り組んでいくことが大切であることを学んだ。今後も日々の人間関係を大切に自己研鑽しながら災害看護活動を続けていきたい。


編集後記


コロナ禍において、2020年はあらゆる領域に影響が及び、人々が心待ちにしていたオリンピック・パラリンピックの延期や全国高校野球大会等の中止、そして私たちが災害看護の知を共有しあう年次大会までも、集合での実施が叶いませんでした。これらの準備に携わってこられた方々の並みならぬご心痛を拝察いたします。一方、長引く非常事態の中で、遠隔通信などの様々な仕組みが発展し、ニューノーマルといわれる新たな概念や方法が見出され、人間の生き抜くための知恵と行動力を再認識しています。今回ご寄稿いただいた方々には、感染予防を念頭に、現社会の多様なニーズに災害看護としてどう応えてこられたかをご紹介いただきました。一日も早く、人々が新興感染症の不安から解き放たれ、社会経済の復興や、学習機会の再開を祈りつつ、災害看護のさらなる貢献を考えていきたいと思います。(佐々木吉子)





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