JSDNニュース No.25
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日本災害看護学会第14回年次大会報告

日本災害看護学会第14回年次大会長
臼 井千津(愛知医科大学)

【はじめに】

2012年における本大会の意義は未曾有の大震災 ・ 複合災害の「3.11束日本大震災」の発生から1.4ケ月が過ぎる時期の開催という状況を反映させることにありました。被災地では大災害発生直後から一年の間に、生命の危機にさらされながらも、さまざまな看護実践が展開されてきました。大会では、

・実践から早急に検討すべき課題、新たな予防対策の検討
・地域の再生もしくは創成における看護の果たしている役割の理解
・これまでに経験してこなかった看護について検討、共有する

などとこれまでになく多彩な成果の発表の機会となりました。総じて学術的に極めて意義深い機会となったものと考えています。

【大会の概要】

テーマを「束日本大震災から一年  復興とともにある看護」 といたしました。
開催期間は平成24年7 月28日(土) ・29(日) の2 日間でした。
会場は名古屋駅に近い、愛知県産業労働センター(ウインクあいち) で行いました。

開会式では大村秀章愛知県知事にご臨席を賜り, 看護への期待を御寄せ戴きましてさらなる励みとなりました。冒頭に黙祷を捧げさせていただきました。

参加者数では真夏の暑い名古屋に1 ,981 名の皆様の参加を得ました。改めて災害看護への関心の高さが示されました。



【内     容】

研究報告では、149題(過去最多) の発表が予定通りに行われ、活発な意見交換が行われました。

プログラムの特徴として束日本大震災プロジェクト・ 特別企画では東北3 県から被災者でもありながら困難なケアに従事された経験を有する保健師・ 助産師・ 看護師・ ボランティア等の皆様から貴重な報告をいただきました。特別講演では, 石井正先生 (石巻赤十字病院/宮城県災害医療コー デイネー ター/石巻圏合同救護チーム統括) による 「石巻医療圏における束日本大震災への対応~宮城県災害医療コー デイネー タ一 として~」および福和伸夫先生(名古屋大学減災連携センター長・ 教授) よる 「束日本大震災に学ぶこれからの地震対策~南海トラフ巨大地震備えて~」の講演では高評を博しました。 教育講演では南裕子理事長に 「災害看護学の次への発展と教育機関の課題」として、看護は実践に学び発展してきた歴史にあるが、余りに厳しいこのたびの経験ではあるが今後を見据え学び続けることの使命を具体的に論じていただきました。特別企画では「多様な活動から考える看護職によるこころのケア」 と続いて「被災地看護職ストレスとこころのケア」の二部構成の企画でした。講師として星愛子(公立志津川病院) 氏、高橋葉子(東北大学病院精神看護専門看護師) 氏の現状報告には、多数の参加者から 「感情が揺さぶられた」とのご意見をお寄せいただきました。改めて御礼を申し上げます。
特別講演  石井  正先生

特別講演  石井  正先生


教育講演 南 裕子先生

教育講演 南 裕子先生


シンポジユームIでは「東日本大震災から一年~被災地の保健・ 医療・福祉の復興と再生  岩手県陸前高田市の取り組み」では多くの職員が犠牲となり壊減状態に陥った陸前高田市の復興の行政支援では初の丸ごと支援 (復興名古屋モデル) を長期派遺保健師の日高橋子氏から報告していただき、高い関心が寄せられました。
本学会では恒例の市民公開講座として 「家族で学ぼう  災害への備え・ 救護の技」および外国人対象の 「外国人のための災害時サバイバルワー クシヨツプ」には、数力国の外国籍の方々の参加を得ました。その他、多彩な企画になり選択に迷う、との嬉しい御意見も頂きました。反面、なんといっても予想を上回る参加者に運営面で移動の際のエレベーターの混雑や立ち見となり疲れが増したことなど厳しいご意見を多数、頂きました。この場をお借りしてお言宅びを申し上げます。
さて、被災地の復興はこれからが本番です。 今後も被災地に居る皆様とともに在りたいと念じてやみません。
未筆になりましたが大会にご参加下さった会員・ 皆様および開催運営にあたりご支援, ご協力を賜りました愛知県看護協会、近隣の病院看護部、大学、ボランティアなどすべての皆様に深謝を申し上げます。


第14回年次大会 総会報告

理事会庶務
森下安子

平成24年7 月28、29日の両日、愛知県立医科大学、臼井  千津氏を大会長に、日本災害看護学会第14 回年次大会が愛知県名古屋市のウインクあいちで、1,900人以上の多くの参加をえて、開催されました。会員数も、個人会員は昨年(6 月末) より132人増え1,069人に、9 月現在では1,200名を超えています。組織会員も54組織、賛助会員7 組織と各1 組織 えており、会員の皆様の本学会への期待に答えるべく、今後ますます充実した学会活動に取り組んでいきたいと考えております。
14回の総会では、当日82名と多くのご出席を戴き、委任状と合わせて総会が成立しました。 総会において、本学会の理事、副理事長、第2 回年次大会長を務められ、災害看護学の発展に寄与された新道幸恵氏が、名誉会員となったことの報告を行いました。また、事業報告として各委員会活動の報告を行い、平成23年度から東日本大震災に関する募金をもとに立ち上げた東日本プロジェクトでは、仮設住宅で暮らす高齢者の健康支援・ 交流支援、健康相談会、看護職対象の語りの場を開催したことの報告を行いました。 今回も昨年に引

き続き、年次大会中の2 日間に募金活動を行いましたところ、38,000円のご寄付をいただきました。ご協力に感謝申しあげます。 被災地は未だ多くの課題を抱えています。 本学会は束日本プロジェクトを継続し、被災地の看護者の活動を支援するために、束日本大震災看護活動支援募金活動を継続して行っています。 引き続き皆様のご協力をお願いいたします。また、今回の総会で、東日本大震災で被災された会員の皆様を対象とした2011 ・ 2012年度年会費免除制度についても承認をいただきました。申請を希望される方は、ホームページ等でご確認ください。
そして、2014年の第16 回年次大会の大会長として、筧  淳夫氏(工学院大学) が推薦され、満場の拍手で承認されました。

次年度は、 北の地、札幌で第15 回年次大会が開催されます。 総会最後には、次期大会長である中村恵子氏(札幌市立大学) より、大会テーマ「災害看護~その多様性への挑戦~」を始め、ひまわりが咲き誇る北海道や大会会場等についてご案内がありました2013年8 月22日(木) ・23日(金)、大会会場は『札幌コンベンションセンター』です。 また多くの会員の皆さまとお会いできることを、被災地の復興と共に心から願っております。


ネットワーク活動委員会・初動調査報告

委員長
酒井明子

同委員会では、 国内の災害時の看護ニーズについて調査・ 情報収集を行い、そのデータを蓄積し、災害看護の知識の構築に貢献しております。 2012年は、下記の初動調査を行いました。調査にご協力くださいました皆様に感謝いたします。なお、報告の詳細につきましては、学会ホームページや学会誌にて順次ご報告させていただきますので、ぜひご覧ください。
電巻災害(栃木県真岡市, 茨城県水戸市, つくば市)
(発災:2012年5 月6 日)
1 . 調査期間:2012年5月29日~30日
2 . 調査担当者: 立垣祐子、深谷真智子
3 . 調査機関: 真岡市役所健康福祉課、茨城県看護協会、つくば市北条地区、飯村病院、つくば市役所健康増進課

九州北部豪雨災害(熊本県阿蘇市)
(発災:2012年7 月11 日~14日)
1 . 調査期間:2012年8 月2 日~3 日
2 . 調査担当者: 酒井明子、漆崎誉子
3 .調査機関: 阿蘇温泉病院、熊本県庁健康福祉部、熊本赤十字病院、熊本県看護協会

九州北部豪雨災害(大分県中津市)
(発災:2012年7 月3 日・11 日~14日)
1 . 調査期間:2012年11月2 日
2 . 調査担当者:  橋明子、吉川明美
3 . 調査機関: 大分県北部保健所、中津市耶馬渓支所、中津市社会福祉協議会

九州北部豪雨災害 (福岡県朝倉市, 柳川市)
(発災:2012年7 月11 日~14日)
1 . 調査期間:2012年11月20日
2 . 調査担当者: 岡崎敦子、山口恵瑞
3 . 調査機関: 北筑後保健福祉環境事務所、南筑後保健福祉環境事務所


第2回世界災害看護学会学術集会報告

日本災害看護学会理事
森下安子

第2 回世界災害看護学会学術集会 (WSDN2012 ) が、平成24年8 月23、24日にオリンピック開催国であるイギリスウェールズのカー デイフ市において「Developing and Realising the Potential」をメインテーマ、Donna Mead学部長(グランモルガン大学) を大会長として開催されました。開催地ウェールズは、過去に小学校近くの炭鉱の町で大規模な土砂崩れ災害が起こり、小学生を含め144 人が犠牲になった経験があり、現在も詩の朗読をとおして防災の伝承をしていることの紹介がありました。
開催前には、理事会が開催され、新たに7 組織が加わり、計46組織が会員組織となったこのとの報告がありました。また、日本災害看護学会から推薦した山本あい子氏が引き続き理事長に選出されました。
学術集会は、世界各国から約200名の参加者があり、日本からも60名と多数の参加がありました。
学術集会の主なプログラムは、災害による世界の難民情勢や、災害時に求められるリーダーシップ、赤十字活動の国際的な障壁など、学際的なテーマで講演がありました。また、日本赤十字大学の小原真理子氏が、 「束日本大震災における災害看護学会の先遣隊による活動」 について学会を代表して講演されました。また、2 日目の口演では、宮城大学の吉田俊子氏が、日本災害看護学会束日本大震災プロジェクトの活動内容と成果を発表され、議論が活発に行われました。また、優秀ポスター賞として、神原咲子氏(高知県立大学) と北村万由美氏(福山平成大学) の2 演題が受賞されま した。世界各国の研究者との活発な議論を通し、日本における自然災害における看護活動の経験が、今後世界を先導するモデルとなることが期待されていることを実感した大会でした。
第3 回世界災害看護学会学術集会は、2014 年に中国看護協会長が大会長となり北京で開催されます。 日本災害看護学会としても、中国看護協会と協力し合い、災害看護学の発展に寄与できればと思います。多くの皆様のご支援とともに、多くの皆様のご参加をぜひお願いいたします。



大災害における災害医療と
今後の災害時医療BCP(事業継続経計画)

国立病院機構 災害医療センター
病院長 高里良男

地球上の大規模災害はその死亡数、被災者数、損害金額ともに年々 加の一途をたどり、国連総会で1990年からを「国際防災の10年」と決議した。しかし人口 加・ 高齢化、都市化などによる不安定居住域拡大・ ライフラインや情報管理の複雑化、環境・ 森林破壊、地球温暖化、新興感染症、原子力を含む危険物質などに関連して、その後も大災害は次々に起こっている。 危険率=危険性x脆弱性/管理能力とされており、この3 要因に対して各種施策が施行されている。
このように、世界的には気象関連災害(台風などの豪風雨、洪水、土砂災害、干魃) が最も頻度と影響度の高い災害とされているが、我が国は気象災害もあるがその他に最も危険性の高い地震の頻発国である。世界の10の地殻プレート中4 つの境界線上にあり、また多くの活断層を抱えている。世界の地震エネルギーの約10%以上が日本付近で発生している。 特に最近では地震の活動期に入っていると言われ、実際18年前の阪神淡路大震災(M 7.4) に続いて昨年の東日本大震災(M9.0) が起っている。 関束地域では最新予測で4 年以内に40%の高い確率で首都直下地震が予測されており、また予知可能性がある駿河トラフに沿った束海地震とそれに連なる南海トラフ沿いの束南海、南海地震の連動が予測されている。
阪神淡路大震災 ( 直下断層地震) 後の多数の重症外傷者のPreventable death ( 防ぎえた死) への反省に基づく初期救急医療体制の強化 (災害派遺医療チーム: DMAT、広域災害・ 救急医療情報システム: EMIS、災害拠点病院など) と束日本大震災( プレート型地震+津波+原子力災害) を経験しての高齢避難者、 慢性疾患患者などの災害要支援者対策、多府県に及ぶ広域災害時の情報管理・ ロジステイツク(補給など) を加えた全危険対応型の対策が求められている。

具体的今後の危機としては、首都直下地震の人的、物的また経済的被害予測は日本の今後を危うくさせるほどとされている。 国立病院機構災害医療センターのある立川広域防災基地はそのために34年前より構想され、18年前の阪神淡路大震災のあった平成7年7月に開院し、日本DMATの事務局が置かれている。
災害から第1義的に保護する責務を有するのは、市町村及び都道府県であり、区市町村の地域防災計画に従って行う諸活動との協力連携の下に、医療救護活動を行うこととなっている。その能力を超える場合は国が補完する。 よって現在検討されている新しい災害医療の方向性も都府県、二次医療圏、市町村に災害コー デイネー タ一を置いて、地域の災害時医療ニーズに対応することとなっている。今後国立病院機構、日本赤十字、日本医師会、その他ボランティア組織もこのような危機管理の統合化のもとで効率よく活動することが求められる。
各医療機関は災害時に医療機関の機能を停止させる要因(下記の①~⑨) をよく考慮する必要がある。病院版のBcP(事業継続計画) では、単なる事業継続では足りず、つまり災害時に一時的に医療需要が大幅に増大し相対的に医療供給量が減少することを念頭に事業継続を考えねばならない。①建物の免震、耐震構造による防災 ②指揮命令、安全、通信、評価と連なる方法の能力取得、実行性の確保 ③エネルギーの確保(電力、ガスなど) ④非常用の電源の供給先の明確化  ⑤水、食糧の確保  ⑥薬剤、医療資器材の確保  ⑦通信手段の確保  ⑧搬送用エレベーターの復旧体制の確立 ⑨事前応援協定

以上のような原則・ ポイントを個人のレベルまで落とし込んで心構えとしていれば、もしもの災害時に応用力が発揮されるものと考えている。


日本災害看護学会第15回年次大会(お知らせ)


日本災害看護学会  第15 回年次大会のテーマは災害看護一 その多様性への挑戦一 と致しました。それは、2011・3・11の地震・ 津波がもたらした大きな被害に加え、原発の間題そして風評被害も地域の人々を苦しめました。更には、台風などの風水害、竜巻、雪害、列車や高速道路の集団事故など、あまりにも多くの災害が襲ってくる昨今です。教育講演などで知識を深め、ワー クシヨツプではその実際を疑似体験することによって、災害の多様性へ積極的に準備をして頂きたいと考えプログラムを練っています。 8 月の札幌でお会いできるよう準備し、皆様の参加をお待ちしています。
【プログラム(案)  ・演 題登録期間】

特別講演:1 題教育講演:3 題

シンポジウム:1~2題
市民公開講座、ナー シングサイエンスカフェなど
ワークシヨツプ3~5題、一般演題(口演、示説)

*演題登録期間は2013年2 月26 日(火)~4 月23 日(火) まで
* ホームページにて逐次最新情報をお知らせいたします。

http://www.ec-pro.co.jp/jsdn1 5/


編集後記


束海、 東南海、 南海地震などが同時発生するマグニチュード(M)9級の 「南海トラフ巨大地震」 について、 国の二つの有識者会議は8 月29日、被害想定などを公表しました。 それに基づき国、地方自治体、医療機関等が防災への取り組みの強化を行い様々な形での訓練が展開されました。さらに12月7 日に三陸沖で発生したM7.4の地震は、警戒と備えへの大切さを再認識することとなりました。
ニュースレター25号は、日本災害看護学会第14回年次大会報告、第2 回世界災害看護学会学術集会報告、災害医療の病院版事業継続計画について、貴重な提言、情報発信をしていただきました。
会員の皆様に、ニュースレターを通して、災害への備えをともに考えていただける機会となるよう、日本災害看護学会社会貢献・ 広報員会は、これからも一層内容を充実させて 報発信して参りたいと考えています。皆様からの投稿をお待ちしております。

■委員長: 臼井千津     ■委  員: 今井家子、大山太、瀬戸美佐子、牧野典子、城戸口親史、大草由美子(記)





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宛先:学会事務所まで

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会員数:2017年12月末現在

名誉会員:4名
(うち2名は物故会員)
個人会員:1,469名
組織会員:39組織
賛助会員:6組織

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