JSDNニュース No.20

感謝状が贈呈されました

日本災害看護学会 理事長 山田 覚

平成22年3月25日に兵庫県公館にて開催された、兵庫県平成21年度「地域防災活動推進大会・防災力強化県民運動大会」にて、日本災害看護学会は、「災害の経験や教訓を伝える活動」の部門においてその活動が評価され、他の団体とともにひょうご安全の日推進県民会議会長の井戸敏三兵庫県知事より、写真の感謝状が送られました。当日は、本学会山田理事長が県民運動大会に出席し、井戸知事から賞状を頂きました。兵庫県では、「自らの命、自らのまちは自らが守る」という防災の原点に立脚し、市町が実施する自主防災組織の組織化および活動の充実強化等の取り組みを支援しています。また、県内の角界角層からなるひょうご安全の日推進県民会議が中心となり、防災への取り組みを呼びかけ、県民・学校・企業などが主体的に行動する「防災力強化県民運動」を推進しています。「「地域防災活動推進大会・防災力強化県民運動大会」の開催をとおして、県民に地域防災への取り組みの大切さについて啓発を進め、自主防災組織等の活性化をめざしています。このような活動の中で、日本災害看護学会の日々の学会活動が評価されたことは大変名誉なことです。尚、本年1月に神戸にて第1回世界災害看護学会が開催されましたが、本県民運動大会では、同時に世界災害看護学会も感謝状を送られ、ダブル贈賜となりました。



第1回世界災害看護学会開催の意義

大会長 南 裕子

世界災害看護学会の第1回学術集会が「Disaster knows no borders: Human bonding (災害がつなぐ地球人の絆)」をメインテーマに1月9日から2日間、神戸国際会議場で開催され、16カ国から412人の参加者を得て、成功裏に終了することができました。日本災害看護学会が主催組織でしたので、理事長、役員をはじめ会員の皆様の連帯感のもと物心とものご協力をいただき、大会長としては心強い限りでした。企画・実行にあたっては兵庫県下の11看護系大学や兵庫県看護協会など地元の多くの看護職の方々のご協力・ご支援をいただきました。また、多くの看護学生さんがボランティアとして助けてくださいました。おかげさまで、参加者の満足度も高く、次回につなぐ学会となりました。深く感謝しています。
本学会の詳細は、事務局長であった岡谷恵子先生が日本災害看護学会誌11(3)に報告してくださっているので、私は本学会開催の意義、特に「つなぐ」に焦点を当てて考えてみたいと思います。まず国別に参加者をみると、日本を含む西太平洋地域(オーストラリア、中国、香港、台湾、フィリピン、韓国)、東アジア地域(インドネシア、ネパール、タイ)、東地中海地域(パキスタン、イラン)ヨーロッパ地域(ドイツ、フランス)、アメリカ地域(米国)およびアフリカ地域(モロッコ)と世界のすべての地域からの参加を得たことと各国の活動報告を聞けたことなど、世界の看護職をつなぐ基盤の一助となれたことです。また、会長講演では、過去と現在と未来を繋ぐ災害看護に焦点を当てましたが、他の基調講演やシンポジウムでは、看護と他の職業を繋ぐ意義がわかりましたし、市民と専門職の繋がりの重要性も体験的に確認されました。さらに、日本災害看護学会が大切にしてきた実践家と研究者・教育者の繋がりも本学会でも生かされていました。参加者にとって、知識や技術が広まっただけではなく、涙を拭いながら傾聴する癒しの機会にもなりました。
次回は来年、英国のグラスゴーで開催されますが、皆で参加するのが楽しみです。


ハイチ国緊急医療活動に参加して

JICA国際緊急援助隊医療チーム 看護師 杉山清美

2010年1月12日、ハイチ共和国で起きた大地震は首都のポルト?フランスをはじめ、各地域に壊滅的な被害をもたらしました。次第に明らかになる現地の状況から治安の悪化が懸念されましたが、日本政府は国際緊急援助隊医療チーム(JDR)の派遣を決定、首都西部に位置するレオガン市で活動しました。
この地域には米国の援助で建てられた看護大学があり、救援の行き届かない大勢の被災者が周辺に避難、学校長と看護学生で支援を行っていました。
看護大学の協力で敷地内の施設を使用した診療が始まり、搬送される負傷者は、JDRがこれまでに経験がないほど重傷な外傷者が多く治療に時間を費やしました。後方搬送を依頼する病院もなく、限りある資機材をやりくりする毎日。多数の負傷者と助けられない命を前に災害医療の厳しさを痛感したのです。
この厳しい活動に看護学生が協力してくれました。仏語の通訳と看護師が活動内容を学生に説明、受付、診療、服薬説明を依頼しました。レオガンは現地語(クレオール語)だけで話す住民が多く、学生は被災者とJDRを誠実につないでくれる存在でした。また、医師が少ないこの国で、学生は診断と治療にも関心が高く、処置の方法、画像診断を熱心に学ぶ姿がありました。さらには日本の文化と社会システムまで関心が及びました。
活動の後半に仲良くなった女子学生からハイチ料理を教わって、食を通じた交流を楽しみました。時には音楽を聞き、髪の手入れを欠かさないなどのほほえましい光景もありましたが、学生達も被災者、数名の学生が亡くなったと聞きました。私はこの辛いできごとを聞くだけで終えてしまったのが残念です。
看護学生は今後ハイチの医療を担う大切な人材です。この体験を学び、復興に寄与できる医療者に育ってくれることを願っています。
最後にJDRの活動を惜しみなく支えていただいた学校長と看護学生の皆様に心より感謝を致します。



兵庫県西部地域の水害<先遣隊における活動を通じて>

阪神高齢者・障害者支援ネットワーク 理事長  黒田 裕子

台風9号は、兵庫県西部地域に平成21年8月9日~10日未明にかけて激しい雨を降らせ、雨量は24時間で326㍉に達した。
避難に遅れた人々の中で18人の死者と2名の行方不明者が出た。日本災害看護学会先遣隊として、すぐに現地へ入り調査すると同時に人的・物的支援に対応した。被災地に共通することであるが、被災そのものも、混乱する現場での支援のあり方にも高齢の方々・障害を持った方々の場合は重く厳しい。又、地域の特性も浮かびあがってくる。佐用町の水害においても18名の亡くなられた方々、2名の行方不明の方々においての原因を追究すれば、「もしかしたら・・・」「もっと備えや、体制が出来ていたら・・・」と思わざるをえなかった。
先遣隊として現地に入ってから1ヶ月後には、仮設住宅の建設が始まっている。どのような場所に建設され、どのように運営されるのかによって被災者の復興(特に健康面・精神面で)及びその後のくらしに差異が生じる。災害によって破壊されたコミュニティ、精神的なダメージ、そこから連動して起きる健康被害の大きさは測り知れないものがある。
「人間」「地域」「くらし」に視点を置いたアセスメントの重要性、地域における要援護者への対応のシステムの確立、更に病院における入退院時の危機管理指導など、この被災地でも支援と併せて教示されることが多かった。
佐用町への支援を今後も継続的に行うにあたり、先遣隊としての活動から見えた課題を 考慮していきたい。即ち、大規模災害を見据えた病院を含む地域社会のあり方、そして個々人の備えについてのアドバイス、又、災害後の初動期のみならず中長期に亘る支援のあり方を考察しつつ活動を組立てていくことである。
災害看護学としても被災地からの学びを更に深化させると共に、教育展開の重要性を感じた。



日本災害看護学会 第12回年次大会


世界的に災害が多発している昨今、災害への意識は徐々に高まっており、いのちを守りいのちを支える体制の整備が進んでおりますが、今後、更に一人でも多くのいのちを守るためには、日頃からの災害への備えや教育・研究が重要となります。本年次大会では、災害看護学の学問的業績に新たな進歩をしるし、有意義なものとして成功しますよう、鋭意努力する所存でございます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
日程:8月28日(土) 受付/11:00? 開始/12:00?
8月29日(日) 受付/8:30? 開始/9:00?
会場:フェニックス・プラザ
〒910-0018 福井県福井市田原1丁目13番6号
大会長:酒井明子 (福井大学医学部看護学科)
メインテーマ:看護の専門知識を統合して実践につなげる
~いのちを守り いのちを支える~


編集後記


看護とは異なる分野(ヒューマンファクター)の人間として昨年度から本学会に参加させていただき,社会貢献・広報委員を担当させていただいております.この1年で改めての驚きは,人命や財産に大きな被害をもたらす大規模災害は一般の人々がイメージする以上に地球上で頻繁に生じており,その度に日本の看護関係者が国境を越えて支援に奔走しているということです.被災した国の社会制度や経済状況,その国を取り巻く情勢が違えば災害も全く異なる様相を呈します.二つと同じ災害はない中で経験と知見を地道に積み上げ,来るべき災害に備えることは困難で途方もない活動でもあります.このような活動に日々努力されている災害看護関係の皆様に敬意を払うと同時に,微力ながら私も何かのお役に立ちたいと思っております.

担当:菅野太郎






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会員数:2023年9月末現在

名誉会員10名
(うち物故会員4名)
個人会員:1,292名
組織会員:33組織
賛助会員:3組織

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