平成30年7月豪雨 先遣隊報告7/15(日):岡山県倉敷市

平成30年7月豪雨 7月15日(日)岡山県倉敷市
活動者:大野かおり、増野園惠(DNGL兵庫)

当日の状況(2018年7月16日)

1. 行程ならびに訪問先
① 09:00~19:30 倉敷市保健所 訪問
② 13:40~14:30 倉敷東小学校 訪問

2. 活動内容
① 倉敷市保健所 ミーティング(朝・夕の全体ミーティング、医療班ミーティング、本部ミーティング、保健師ミーティング)参加・情報収集した。収集した情報等は以下のとおりである。
 倉敷市保健所に各地から派遣された医療関係組織による『倉敷地域災害保険復興連絡会議(kurashiki Disaster Recovery Organization;kuraDRO)』が結成され、種々の医療チームが参集して連携・協働の下、活動していた。
 岡山県レベルでの対応を統括する組織として倉敷保健所と備中保健所を置き、その下にkuraDROが配置される形である。

7月13日よりDHEAT(医師、保健師、薬剤師、栄養士、ロジ)が派遣され、災害支援本部とともにkuraDROの動きを調整していた。kuraDROによる被災地支援のコントロールは能動的・協力的に行われていた。kuraDRO内は「本部」「医療ニーズ」「避難所ニーズ・保健師」「医療班活動指揮」「AMAT」「クロノロ」等のチームに分かれ、他チームと連携しつつ、それぞれの仕事に主体的に取り組んであいた。これらの活動により、支援内容は次のフェーズに移行しつつあり、支援方法の見える化が進んでいた。例えば、
・ 避難所は1回目のスクリーニング終了し、評価表作成、電子化によりEMISで避難所の状況を情報共有できる。
・ 救護所の診療記録をJ-SPEEDによって電子化することにより、支援者自らアプリを利用して避難所情報を入力することによって、迅速に情報発信・共有し、避難所支援の方向性をタイムリーに抽出できるシステムを構築していた。これにより、医療班メンバー間で情報の整理・分析・共有がしやすくなっていた。

 現在、避難所は倉敷保健所管内16か所、備中保健所管内16か所、計32か所で、約2,500人が避難している。計11のチームが支援に当たっていた。吉備路クリーンセンター(医療機関受信の交通手段に問題あり)を第2の医療連携拠点にして活動する予定である。
 災害支援ナースは7月11日より岡山県看護協会から派遣、7月15日からは香川県、大阪府などから派遣が開始された。災害支援ナースの派遣により、医療班、派遣保健師の活動と合わせて、避難所の健康・生活支援は一応、体制が出来上がり細やかな情報収集と支援ができるようになった。他に個人ボランティアの看護師、NPOキャンナス等が活動していた。地元開業医のよる診療推進(診療報酬による地元の収益増)を目指した取り組みも始まった。
 避難所で生活する被災者の健康状態について、慢性疾患への対応や、感染症および熱中症発症について今後も継続して注意が必要である。特に熱中症についてはOS-1の配布(配送先リストの作成)やクーラーの完全設置を目指していた。
 総社エリア(700名程度の避難所生活者のうち500名が真備町住民)や数か所の小規模避難所への看護支援が充足していない様子であった。
 在宅で生活する要援護者の健康・生活状況の把握と支援へのつなぎとして、倉敷市保健師によるローラー作戦が7月13日より開始された。迅速に全市域を把握するにはマンパワーが不足でしており、外部支援を活用したローラー作戦の計画とJRATも加えた実施を検討中である。

 生活面では1か所の避難所を除いてクーラーが設置され、段ボールベッドも配られた。定期薬が必要な者への対応や特別栄養食品の手配も始まっている。一般ボランティアについて、熱中症が増加している(搬送者2名)。ボラセンでの注意喚起を徹底する方針であった。

 ミーティングでは現在の避難所および被災地の課題として以下の点が挙げられた。
・ 避難所に医療チーム、保健師チーム(災害支援ナースを含む)、JRATが重複して入っており、被災者からは「同じことを何回も聞かれる」という苦情が寄せられ、被災者の負担が大きい。情報共有しながら活動する必要がある。
・ 真備町住民で避難所に避難している者の正確な数が把握できてない。
・ 情報は集まったが、その分析とそれに対する支援・成果がわからない。
・ 菌・ウイルス・害虫による健康障害(感染症、ダニの発生)がある。
・ 認知症者の避難所生活長期化による症状悪化の潜在的問題が考えられる。

② 倉敷東小学校 情報収集
個人ボランティア看護師(2名)が活動しているが、「泊りによる夜の対応もしてほしい」と言われたため、どうすればよいか」とkuraDROに相談があり、避難所の状況と医療・看護支援の必要性を把握するために訪問する。看護師は不在であったため、避難所の状況のみ確認する。避難者50名であるが、日中の在室者は10名ほどであった。避難者による組織化も行われていた。
段ボールベッドも配布され、利用している避難所もいた。今後は段ボールベッドの使用により、避難所の空間配置を再考して住みやすい環境に改善していくということであった。

3. 課題
 避難所への支援体制は整えられつつあるが、現場の状況との乖離もみられる。避難所で活動している支援者の情報を丁寧に掬い上げて看護活動の方針に活かすことが望まれる。
 また、在宅にも高齢者・療養者がいるが、避難所に支援が偏りがちであるため、在宅での要援護者に災害関連死のリスクが高くなることが考えられる。ローラー作戦が開始されるが、マンパワー不足もあり、災害支援ナースなどのマンパワーを投入することにより迅速に地域アセスメントを行い、支援につなげる必要がある。
 また、在宅での要援護者を支援する地元の在宅サービス提供者の状況についてのアセスメントも必要である。訪問看護ステーションをはじめ、居宅介護支援事業所、通所サービスなどの状況を把握して、地元サービス提供者への支援を具体化する必要がある。




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